良い思い出は形に残さなくたって、良い
祖父の体調が芳しくなく、急きょ開いた結婚お披露目パーティー。
なんでパーティーをしようと思い立ったのか分からないけれど、小さいころから「可愛い、可愛い」と褒め続けてくれた祖父に、一番「可愛い」姿を見せたかったのかもしれない。
「親族集まっての食事会だよ」とホテルに祖父を連れてきてもらい、食事の終わったところでウェディングドレス姿をお披露目するという一世一代のサプライズ。もちろんご祝儀ももらわないから、かなりお金がかかったけれど(ホテルのスイートルームを貸切にした)本当にいい思い出。
体調が思わしくない祖父でも食べられそうなメニューを、料理長に相談して作ってもらった。
入口に祖父の名前で「○○を囲む会」と看板を立てた。親族の集まりが大好きだった祖父は体力がなくなっていて車いす移動だったけれど、食事はおいしいと食べてくれた。
そして、さあドレスでサプライズ登場!という直前に、何を思ったのかやぶってしまったベール・
こんなにおっきい穴をあけてしまったのに、なんだかわからないけどそのときはすっごい笑えた。
『穴あいちゃったーははは!なしでいっか!』と大笑する私をよそに、ホテルのスタッフと新郎が真っ青になってたのも今となってはいい思い出。
(別にベール無しでもいいやあ、って本気で思っていた&中古で買った安いベールだったのでショックもなかった)
結局、機転を利かせたホテルのスタッフが、レンタル衣装室からベールを借りてきてくださって、無事に装着できてありがたかった。
部屋を掃除するのをきっかけに、この思い出のベールも廃棄。燃えるごみへ。
結局祖父はそのパーティーの4か月後に亡くなり、本当の結婚式には出席できなかった。
自己満足にすぎないかもしれないけれど、やっぱり亡くなる前にドレス姿を見せられてよかったと思う。
今でも祖父母の家に行くと、2階から祖父が下りてきそうな気がする。でも、家のメンテナンスが大好きだった祖父を失ったお家は、やっぱり所々ダメになってきていて、それをみて祖父がいないことを実感する。
「最近は、結婚式が終わった人のことを「卒花」って言うらしいよ」と祖母に教えてあげた。
そしたら祖母は「じゃあ私は卒花50年だわ」と言って、みんなで笑った。
今日も平和で、いいお天気だ。